「絶対に太ったらダメよ。」
中学生の頃、母によく言われていた言葉。
母が私のためを思ってかけたこの言葉は、私の心に深く刻まれていました。
今日は、私が自分の心と体と歩んできた道のりについて書いていきたいと思います。
大好きなバレエと、母に教わった「美の基準」
私は8歳の頃からクラシックバレエを習っていました。
きっかけは、母が私に「やらせたかったから」。
子どもの頃に少しだけ習っていたバレエを、お金の事情で続けられなかった母。
その夢を、私に託したのだと思います。
色とりどりのコスチューム、素敵な音楽、美しい先輩バレリーナたち。
バレエの世界はとても魅力的で、私はすぐに夢中になりました。
当時のバレエの世界では体型管理は「できて当たり前」。
中学生になると、女の子の体は自然と大人の輪郭になっていきます。
細い体型を維持できない仲間は、静かに教室から姿を消していきました。
そして、私の母は「美しい=細い」を信じて疑わない人でした。
中学生の頃から、母にはよくこう言われていました。
「絶対太ったらダメよ」
「お願いだから、それ以上太らないでね」
「そんなに食べてたら痩せないわよ」
大好きな母からかけられたこれらの言葉は、私の胸に深く刻まれていきました。
そして自然に、「美しい=細い」という価値観が刷り込まれていったのです。
当時は意識していませんでしたが、
「細くなければ愛されない」
「太ったら見捨てられる」
そんな思い込みが、いつの間にか心の深くに根を張っていました。
日々、さまざまなダイエットを繰り返しながら、10代を過ごしました。
「細くなれた」高揚感の裏で、聞こえなかった体の悲鳴
大学受験をきっかけに、大好きだったバレエを辞めることになりました。
そして22歳の頃、社会人になってからバレエを再開。
久しぶりに出る発表会で、素敵なソロ曲を踊ることになった私は、体型管理に再び火がつきました。
極端な食事制限、激しい運動。
短期間で大幅な減量に成功し、発表会は大成功。
細くなった体と、周囲からの賞賛の声。
「痩せればすべてうまくいく」——そんな価値観が、ますます強化されていきました。
けれどその裏で、体は悲鳴をあげていました。
月経は止まり、手足はいつも冷え、心拍数はどんどん下がっていく。
「これ以上痩せたら、命が危ないよ」
体からのSOSは、当時の私にはまったく届きませんでした。
摂食障害――長い闘いの始まり
発表会が終わったあとも、私はその細い体を維持したいと強く願っていました。
でも、心の奥では「少しくらいいいよね」と、今まで禁じていた甘いおやつや菓子パンを食べるようになっていきます。
そして、少し食べると「もっと欲しい」と止まらなくなる。
完全にコントロールできていたはずの食欲が、自分の意思ではどうにもならなくなっていくことに、戸惑いと焦りを感じました。
苦しく辛いダイエットで手に入れた体は、徐々に戻っていきました。
体重は元に戻り、やがて以前よりも増えていきました。
それでも、食欲は止まりません。
泣きながら食べ続ける日々。
やがて私は「食べて吐く」ことを覚えます。
いわゆる過食嘔吐です。
「なんでこんなことしてるんだろう……」
「ただ、美しくなりたかっただけなのに」
人前では何事もないふりをして。
家では、食べて吐いてを繰り返す。
そこから、長く苦しい摂食障害との闘いが始まりました。
「太った自分には価値が無い」
無理なダイエットの反動で始まった過食嘔吐は、何年もかけて少しずつ落ち着いていきました。
けれど、ストレスがかかると「大量に食べて吐く」という行動は、私のお決まりのパターンになっていました。
「こんな自分はダメだ」と思って、大量の食べ物で自分を慰める。
でも、心のどこかで「太ったら本当に終わり。私は誰にも愛されなくなる」と怯えている。
吐かなければ、体重が増えてしまう。
吐けなかったらどうしよう。
焦り、不安、自己嫌悪――それが日常になっていました。
「こんなことをしないと私は生きていけない」
「私は依存症なんだ」
そんな思いを抱えながら、誰にも言えずに、自分を保つためだけに過食嘔吐をして、生きていました。
今だから伝えたい、あの頃の私へ
今だからこそ、あの頃の私にかけてあげたい言葉があります。
「必死で生きてくれて、ありがとう」
「母に愛されたかったんだよね」
そして、無理をさせ続けてきた体に。
「ひどい扱いをしてごめんね。
それでも病気ひとつせず、健康でいてくれてありがとう。
あなたは本当に優秀だったね」
摂食障害は、体の叡智だったのだと思います。
「その生き方は違うよ」と、時に激しく、時に優しく、私に伝えてくれた。
だからこそ、今の私がいます。
今もまだ、自分を責めそうになることがあります。
でも、そのたびに――“今の私で大丈夫”って、少しずつ思い出せるようになりました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
次回は、自分の心の声を聞くきっかけとなった摂食障害治療と、新たな「フィットネス」との出会いについて書きたいと思います。
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